平成30年3月号

「春よ来い 早く来い」

 ″冬来たりなば 春遠からじ"、″暑さ寒さも彼岸まで"。脳裏に浮かぶのは憧憬にも似た待ち遠しい春の訪れだ。それにしても今年の冬の冷え込みは尋常ではない。昨年末から年明け以降も最低気温は連日氷点下。記憶に残るところでは、氷点下12~13℃。最高気温も10℃を上回った日が一度もなく厳しい寒さが続いている。季節の中で2月が一番寒い時期だと分ってはいるものの、連日の凍てつく寒さは身に堪える。いつもの年と違い、早朝の裏庭の土は、霜柱でモッコリと大きく盛り上がり、北向きの屋根の軒先には大きな氷柱がぶら下がっていることからも今年の猛烈な寒さが窺い知れる。
 いずれにしても、春彼岸まで残すところ1ヶ月余り。もう少し辛抱すれば暖かい春がやってくる。この際、歌でも歌って待ち遠しい春の気分に浸ってみたい。春の歌と言えば真っ先に思い浮かぶのはこの歌だ。「春よ来い」
 ″春よ来い 早く来い あるきはじめたみいちゃん(文子)が赤い鼻緒のじょじょ(草履)はいて おんも(表・外)へ出たいと待っている"
 そして春3月といえばこの行事、「雛祭り」。雛祭りは、言わずと知れた女の子のお節句。元来、我家では縁のない行事だ。というのは、私には娘がいない。息子にも娘がいない。従って我家では私の妹が生を受けて以来、60有余年、女の子が生まれていないことから雛祭りは無縁の行事というわけだ。それだけに雛祭りについては、知らないことばかりで、だからこそ興味が湧くというものだ。
 春を代表する行事の雛祭り。
 春の気分にいち早く浸りたいという思いを込めて、今月は、雛祭りについて調べ、知り得たことを書いてみることにする。一般的に、3月3日は、雛人形や桃の花を飾り、女の子の健やかな成長を祈る行事で「上巳(じょうし)の節句※1」、「桃の節句※2」とも呼ばれている。春を寿(ことほ)ぎ、穢(けが)れを払って、無病息災を祈る行事がもとになっている。平安時代の宮中では、3月3日に、水辺に出て、紙の人形(ひとがた)で、身体を撫で、病や災いを人形(〃)にして流す「上巳祓」や、水の流れに酒杯を浮かべ、詩や歌を詠む雅 (みやび)やかな「曲水の宴」が盛んに行なわれた。貴族の間では、幼児を災いから守るため、身代わりとなる人形(〃)を子どもの枕元に置く習しもあり、また宮中や貴族の子どもたちは、小さな紙の人形(〃)で「雛遊び」を楽しんでいたという。因みに、雛人形の「ひな」は小さくてかわいらしいもののことだそうだ。
 室町時代になると、雛人形を流さずに取っておくようになり、やがて、雛人形を飾って祝う習慣は、貴族社会から武家社会に伝わり、江戸時代になると、裕福な町人の間に広まったという。一般庶民に広まるのは、明治時代になって百貨店でお雛様が販売されてからであり、豪華な雛人形セットが一般化したのは昭和になってからである。なお、雛人形セットを売り出した百貨店とは、やはり、あの三越百貨店である。
 飾り付けで気になることもある。飾り付けは立春(2月4日頃)過ぎてからとも、雨水の日(2月19日頃)(この日に飾ると良縁に恵まれるという説)とも言われ、避けなければいけないのは、前日に慌てて飾る「一夜飾り」と言われている。また厄祓いの意味をもつお雛様は、いつまでも出しておかず、早目に片付けることを良しとし、「長く出したままにしておくとお嫁にいきそびれる」こと、また、「片付けを面倒がってはならない」とする躾の意味合いもあって、江戸では3月4日が「雛納め」になっている。
 次はお供物の話し。供物の一つゝに意味が込められていると知り、やはりそのことも書き加えてみたい。
 まずは、草もち~雛祭りは「草もちの節句」とも言われ、お供物としてなくてはならないもの。ハレの日の供物の代表的な存在。その説明にただ納得。
菱飾~赤は「花」、白は「雲」、緑は「若草」を表わす。菱は、池や川に自生する菱形の葉を持つ水草。実は滋養強壮の薬効があり、また、その実の賢さから「身持ちの賢さ」そして、繁殖力の強さから「子孫繁栄」の象徴とされる。
雛あられ~尊い穀霊が宿るとされるお米を煎った「おいり」をまくと、場を清める力があるという。
白酒~ハレの日には欠かせない飲み物。白酒は江戸時代後期からといわれている。
蛤の潮汁~蛤は二枚の貝殻同士以外の貝殻とは合わないところから「夫婦和合」の象徴とされ、雛祭りのお祝膳には欠かせないものとなった。なお、蛤は汚れた海にはいないことから純潔を表わすという。ちらし寿司~明治時代頃まではお赤飯が用いられており、その後、春らしい飾り付けのちらし寿司になったという。
 さて、ここまで書き進めてくると春の暖かさが思い出され、心も身体もほんわかとしてきました。真夜中の冷気を一時でも忘れることが出来ました。皆さんはどうでしょうか。まだゝ寒い日が続きます。待遠しい春はもうすぐです。風邪などひかぬようお身体ご自愛の上お過ごし頂くことを念じながら今月の私のひと言といたします。
※1 上巳の節句
上巳とは、5節句の1つで3月頃の日を指す。節句には、季節の変り目、節目という意味があり、古来の日本では節句ごとに厄払いをする風習がありました。そして、上巳の節句では、紙や草、蒿などで作った人形(ひとがた)を身代わりにして川に流すことで、厄払いや健康祈願をしてきたのです。
※2 桃の節句
桃の節句と呼ばれるようになったのは、旧暦の3月3日は桃の花が咲く頃だったためとされています。古来、中国や日本においても、桃には邪気を払う力があるとされ、上巳の節句は邪気払いの日であるため桃の木を飾ったのです。

問い合わせ先

このページに関するお問い合わせは矢吹町です。

アンケート

矢吹町ホームページをより良いサイトにするために、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
なお、この欄からのご意見・ご感想には返信できませんのでご了承ください。

Q.このページはお役に立ちましたか?
スマートフォン用ページで見る