平成30年10月号

「大地震~過去を知り、明日を知る」 

 秋の日は釣瓶(つるべ)落とし。朝夕めっきり冷え込む日が続く今日この頃。
 一年の四分の三を過ぎ感じることは、今年ほど自然災害に見舞われた年はなかったのではないかということ。地震は勿論、台風等による風水害の被害は甚大であり、自然の脅威は年々増すばかり。殊更、地震は6月の大阪北部地震、9月の北海道地震をはじめ、9月までに震度5以上の大きな地震が6回も起きている。また、台風の発生数についても例年になく多く、まさしく、「災害大国ニッポン」。それを裏付けるように、災害リスクは、国別ランキングで世界第17位。なかでも、地震の発生ランキングは、インドに次いで世界第2位という。驚くことに、世界で発生する地震の10%が、マグニチュード6を超える地震に絞ると20%が日本で起きているという。今月は脅威の地震について焦点をあて、話を進めることとする。
 さて、ここで皆さんに質問。昨年一年間、日本で震度1以上の地震は何回発生したでしょうか?正解は?2,025回です。次に、過去10年間で最も多かった年は?想像つきますよね。東日本大震災が発生した2011年です。その数10,681回。また、過去10年間(2008年~2017年)の合計は、33,561回。年平均、3,356回。一日当り9.19回発生していることになる。 
 このように、毎日、多くの地震が日本各地で瀕発しており、7年半前の東日本大震災や、気象庁観測史上初といわれる9月の震度7の北海道大地震が、今後も間違いなく、すぐに、どこにでも起きることを、私たちは強く認識しなければならないし、今後も地震の脅威を避けて通れない私たち。だからこそ、今、そしてこれからを知ることは、過去を知ることが大切。そのような視点から、次に紹介するのは、歴史書「日本書紀」に、初めて「地震」が記されてから、M(マグニチュード)7以上の主な地震を年代別に書き進めることにする。
●古墳・飛鳥・奈良時代(416年~1191年)
~約770年間に20回記録、38.5年に1回の発生。この時代は、正確な記録がなく、実際はもっと多かったものと推察。
 主な地震は、684年 白鳳地震(M8.25)。南海トラフが震源。津波で、矢吹町の5分の1にあたる、12㎢が水没。
 869年 貞観地震(M8.3)。古代最大クラスの地震。三陸沖が震源。東日本大震災と同規模。津波による溺死者多数。
 ※864年 富士山貞観大噴火。
●鎌倉・室町・戦国時代(1192年~1602年)
~約400年前に16回。25年に1回の発生。
 この時代の最大の地震は、 1498年 明応地震(M8.2~8.4)。
 海岸から3km以上離れていた浜名湖が、淡水湖から汽水湖(海水が混じる)に。建物の中に鎮座する鎌倉の大仏が高さ9mの津波で露わに。
 1586年 天正地震(M7.8)/1596年 伏見地震(M7.25)と2度の大地震。「地震はナマズの仕業」とは、関白豊臣秀吉が言い出しっぺと言う。
●江戸時代(1603年~1867年)
~約260年間に、60回。約4年に1回の発生。
 1611年 慶長三陸沖地震(M8.11)。東日本大震災クラス。1万人超の溺死者。
 1707年 宝永地震(M8.6)。我国最大級の地震。東海道から紀伊半島、そして四国、九州まで広範に被害。死者2万人。倒壊家屋6万軒。津波流出家屋2万軒。
 ※翌1708年 富士山宝永の噴火。
●明治・大正時代(1868年~1926年)
~59年間に29回。約2年に1回発生。
 この時代はやはり、1923年 関東大地震。
 死者、行方不明者10.5万人。建物全半壊21.1万軒。
 東京の住宅6割消失。神奈川県では、高さ12mの津波を観測。
 1896年 三陸沖地震(M8.2)
 東日本大地震と震源域が同じ。死者2万人。ほぼ全ての人が津波の犠牲。
●昭和・平成時代(1926年~2016年)
~90年間に49回、うち平成は13回。約1.8年に1回発生。
 1933年 三陸沖地震(M8.1)
 津波の高さ、岩手県綾里(りょうり)湾で28.7mを観測。
 1938年 福島県沖地震(M7.5→7.3→7.4)
 11月の発生から年末までM7の地震が続く。
 1964年 新潟地震(M7.5)東京オリンピックの年。
 1995年 阪神淡路大地震(M7.3) 死者6,434人。家屋全半壊24.8万軒。
 2003年(M8.0)/2005年(M7.2)/2008年(M7.2) 宮城県沖、岩手宮城内陸地震が立て続けに発生。
 2011年3月 東日本大地震(M9.0)
 869年貞観地震、1896年三陸沖地震と同クラス。
 死者16,278人。行方不明者2,994人。家屋全半壊48.3万軒。
 ここまで、大地震を年代別に書き記してきた。古墳時代から約1600年の間に174回の大地震。何んと9.2年に1回の割合で大地震が発生。まさに脅威。調べ終えたあと、改めて私の片わらにいつも置いてあるその文章を再度手にとり、読み返した。
 それは、鴨長明の「方丈記(ほうじょうき)」。鎌倉時代の初期、1212年に書き表された随筆である。「方丈記」のほか、「歎異抄(たんにしょう)」、「徒然草(つれづれぐさ)」の3つは、名文として名高く、日本を代表する「三大古典(随筆)」と評されている。序の「ゆく河の流れは絶えずして、・・・・」に始まるこの随筆では、「元暦(げんりゃく)の大地震」の一章に「おびただしき大地震(おおない)ふること侍(はべ)りき。そのさま世の常ならず。山崩れて川を埋(うす)み、海はかたぶきて、陸地(くがち)をひたせり。土さけて、水湧き出で、巖(いわお)割れて、谷にまろび入る。」と。そして、「恐れの中に恐るべかりけるは、ただ地震(ない)なりけり」と続く。
 このように、「方丈記」は、日本で初めての「災害文学」であり、大地震による揺れの様子を伝え、そして、結びに現世の私たちにも警鐘を鳴らす。「人皆あぢきなき事を述べて、聊(いささ)か、心の濁りも薄らぐと見えしかど、月日重なり、年経にし後は、言葉にかけていひ出づる人だになし。」と書き記す。
 実に示唆に富む文章である。
 東日本大震災から7年半。9月の北海道の大地震から約1ヶ月。次の地震は、明日かも知れない。今、改めて「方丈記」の一節を噛み締めながら暮らして頂くことを切に願い、今月の私のひと言とする。
 

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