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町政情報

平成31年3月号

「極寒」の冬を思う    

 寒い。年明けから異常な寒さが続いている。特に先月9日からの3連休は、近年稀にみる「極寒」の表現がピッタリの寒さだった。気象庁の発表によれば、この寒波は、観測史上最強レベルという。北海道の札幌では最高気温がマイナス11度、日本一寒い町陸別町ではマイナス31度、矢吹でも0度まで下った。
 寒波をもたらしたのは、普段は北極上空にある「極渦」と言われる非常に冷たい大気の渦が変形して2極化し、1つはカナダやアメリカ北部まで南下、もう1つがロシア方面に南下して、その1部が日本にやってきたためという。この寒さは想像を絶するものだ。1月末には、アメリカ・イリノイ州ではマイナス50度を記録。アメリカのTVニュース番組では、この「歴史的な寒波」を驚きをもって放送していたが、街は氷の世界。川という川が、ナイアガラの滝が凍り、家々も氷に覆われ、外界では「5分で凍傷」になるとのことから、外出禁止令が出たとか。勿論学校は休校。郵便配達も中止になり、道行く車も途中でストップ。不凍液が凍ったからだという。かつて、こんな現象は頻繁には起きなかったわけで、理由ははっきりしないが、地球の成層圏における大きな大気の流れの変化が関係しているのだと考えられている。また、この極渦が、北米やヨーロッパ、そして日本にもたらしている寒波は、決して一過性のものではなく、事実、北米では、1月22日、24日、そして2月に入ってからも、寒波の勢力は衰え知らず。このような状態が繰り返し起きていることは、地球全体の気温や気候の状況を根本から変えてしまうことになるかも知れないという、不安を覚えるのは私ばかりではないかと思う。
 では、何故こうした最強寒波による「極寒」現象が起きるのか、日本列島を例にとり、その背景について記してみる。
 気象庁によれば、冬将軍を呼び込むラニーニャ現象の影響によるものとの見解を明らかにしている。ラニーニャ現象は、すでに昨年9月から起きており、その影響は、年明け後の1月中旬の大雪、そして1月下旬にかけて、上空5,000mに流れ込んできたのはマイナス36度以下の非常に強い寒気によるものだとしている。ラニーニャ現象の影響は大きく、僅か1~2度の海面水温の変化が、上空9,000mを流れる大きな気流を蛇行させ、極渦の強力な寒気を引き込んだからだという。
 ラニーニャ現象とは、ご存知の通り、太平洋東部のペルー沖で、海面水温が平年より低く、西部のフィリピン沖では高くなる現象をいう。ペルーが高く、フィリピンでは低くなるエルニーニョ現象とは逆のパターンだ。ラニーニャ現象で高くなる水温は、僅か1~2度だが、海水温1度変わるだけで、大気中に大きな変化が現れるというから驚きだ。
 その仕組みはこうだ。水温が上がると、その海域では大気中の水蒸気が増え、空気が暖められる。すると、海面近くの暖気は上昇気流となり、その上空で水蒸気が冷やされ雲になる。こうして、その海域では対流活動が活発になり、大気は不安定で積乱雲が発達しやすくなる。フィリピン沖で発生した上昇気流は、冬場はチベット付近で下降気流となり、チベット高気圧を強めることになる。大陸側の高気圧が強まれば、いわゆる西高東低の冬型の気圧配置を強める結果となる。さらに西から東へ流れる上空の寒帯前線ジェット(偏西風ジェット気流)が、強力なチベット高気圧を避けて北側へ蛇行、その変動で、日本付近では南側へ蛇行する。通常は、北海道付近の上空にある偏西風が関東付近の上空まで蛇行すると、北側の強い寒気が日本列島を覆い、冬型の気圧配置を強めることになり、「極寒」の大寒波に見舞われるというわけだ。成程、これで寒さの秘密が分った。
 ここで、もう一つの興味も湧いた。
 では、日本で、また、地球全体では、どれ程の最低気温が観測されているのかについてだ。まず、日本では、遡ること117年前の1902年(明治35年)1月25日、北海道旭川で日本の観測史上最低気温マイナス41度が記録された。因みにこの時の大寒波は歴史に残る大きな出来事を引き起こしている。皆さんもご存知の大事件。場所は変わるが、23日から27日には、青森県で八甲田雪中行軍遭難事件が発生し、日本陸軍第8師団の訓練参加者210名中、119名が凍死するという近代登山史における世界最悪級の山岳遭難事故が発生している。なお、史上最低気温観測記録上位5位のうち4つは北海道で記録されているが、4位に富士山山頂のマイナス38度が1981年2月27日に記録されている。因みに福島県では1891年(明治24年)2月4日のマイナス18.5度が史上最低気温となる。
 次に、地球上、最も低い気温が観測されたのかについてだが、記録によれば1983年(昭和58年)7月21日に、南極大陸のロシアボストーク基地でマイナス89.2度が記録されている。なお、2位はシベリア、マイナス67.8度、3位がグリーンランドでマイナス66.1度と、それぞれ記録されている。
 このように、今冬、日本の、そして地球上で記録された史上最低気温の「極寒」は、想像すら出来ない。以前、旅先でどこか思い出せないが、「極寒パビリオン」を体験したが、異常に寒かったといった記憶はあるが、考えてみれば、その時間は束の間、ほんの数分であり、我慢もできた。でも、マイナス4~50度が1日中、また、3日間、はたまた1年中気温が0度以下といった生活は想像も、体験もしたくない。しかし、私たちは考えなければいけない。今、この寒波が、自分の身に降りかかっていなくてもである。地球上で、日本で起きているこの異常気象がいつ、何時起こっても不思議ではないことをだ。今年の災害級の大寒波について、あらためて認識を深め、様々な備えを考え、実行して頂くことをお願いし、今月の私のひと言とする。
 

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