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町政情報

令和元年7月号

「温泉地のネーミング」

 例年より一足早く梅雨入り。羽鳥ダムの貯水量不足等により田植時期が昨年より更に遅れた矢吹ヶ原も、干天の慈雨によりようやく田植えも終りを迎え、「さわやかな田園のまち・やぶき」に相応しい景色が戻った。
 梅雨といえばネガティブなイメージが色濃いが、ここ数年は、梅雨の雨が何程嬉しくて、今年の程良い降雨に感謝の念を抱き、喜んで傘をささせて頂いている。
 そんなことを思っていた矢先、6月6日放送のNHK番組「ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!」を観た。
梅雨寒が続けば、思い浮かぶのはお風呂。ちょっとのお金と時間的余裕があれば、近くの温泉地へ足をのばし、お湯に浸りたい。日本人なら、誰でも思い浮かぶのでは。そんな期待を持ちながら番組を観た。想像した内容とは違ったが、放送内容に惹きつけられた。TVを観ていない人のためにも、今月はその内容を紹介したい。
番組では、熱海、草津、酸ヶ湯(すかゆ)温泉の名前の由来を紹介している。
 まずは、日本三大温泉といわれる熱海温泉は、古代、熱海の海は、本当に煮え立っていたという。それを裏付ける絵も残されている。海底から噴き出す熱泉が海を熱くしたという。その後、熱泉の湯元が海底から陸地に移り、恐ろしい海は生れ変わり、温泉地の熱海が誕生したとある。鎌倉時代、武士や僧侶達が押し寄せて、熱海は関東の温泉ブームの先駆けとなった。この温泉地は、当時は「安多美」の漢字が宛てられていたが、鎌倉時代末期、この地が人々の間に地獄のイメージが広がって、「熱海」の漢字に戻している。一旦地獄(温泉)の熱い湯に浸かることで、人生を穢れなき身に再生でき、極楽浄土に往けると思いを馳せていたとみられている。
 次は草津温泉。草津温泉も歴史が古く、室町時代まで遡る。江戸時代の全国温泉番付で、常に最高位の東の大関に位置づけられた名湯。江戸時代は臭い水という意味で「久草津」と書いて「くさうず」と呼ばれていた。温泉の強烈な臭いが邪気を払うと当時の人は考え、その名が付いたという。
 そして、酸ヶ湯温泉。人里離れた酸ヶ湯の名物は、160畳ほどある千人風呂だ。この「酸ヶ湯」は、湯が酸っぱいこと、また、津軽弁で「すっけえ」ということから当初、「酢ヶ湯」という漢字が宛てられていたという。江戸時代、酢には高い殺菌力があることが知られており、酢の温泉に浸かる効果、つまり、江戸時代の健康ブームでその名前を付け、その後、時代を経て温泉を科学する時代に「酢」から「酸」の字になる、効能ネームとなった。
 番組終了後思った。温泉地の名前には様々な由来があることをあらためて思い知った。そこで少し変った名前?の温泉地名を調べてみた。
 まずは、県内。近くの母畑温泉の由来から。今からおよそ900年前、八幡太郎義家(源義家)は、陸奥の国の安倍貞任を成敗すべく山深い当地の山中を進軍。戦いで足に怪我をした義家の愛馬の手当てとして、谷間の水に足を浸したところ、たちどころに怪我が良くなったという。谷の水には温泉が混じっていることを知った義家は、湯の湧き出る岩の上に母衣(ほろ)をかけ、この地を後にしたという。このとき義家が母衣と旗を祀った土地は、「母衣旗(ほろはた)」と呼ばれ、いつしか訛って「母畑(ぼばた)」と呼ばれるようになった。
 そして猫啼温泉。今から千年の昔、平安中期の女流歌人「和泉式部」は、当時石川の地に生まれ、少女の頃こんこんと湧く清水のほとりに来ては、水鏡で顔を洗い、髪を梳くことを楽しみとし、美しい乙女となった。式部は当地では「玉(たま)世(よ)姫(ひめ)」と呼ばれ、愛猫は「そめ」と呼ばれていた。故郷にとり残された愛猫は、病み衰えたが、日毎にこの泉に来ては啼き、泉に浸っているうちに病は癒えて、美しい猫となった。猫を見守っていた里人達は、はじめてこの泉が霊泉であることを知り、入浴により、諸病に効能があり、この里を猫啼と名付け、名湯として今日に及んでいる。
 次に国内の温泉地名の由来についても触れてみる。
 乳頭温泉地名はユニーク。雪深い秋田の山奥に乳頭温泉はある。温泉の歴史は古く、かつて秋田藩お抱えの湯治場として栄えた。名前の由来は、烏帽子岳、通称「乳頭山」から来ており、その名の通り女性の乳頭のような美しい姿をした山の麓にある温泉であったことと、乳白色の湯はまさに名湯の名に相応しい。
 そして、温泉地名を聞き何と美しい名かと感銘する鶯宿(おうしゅく)温泉。開湯は天正(1573~91)時代。加賀(石川県)の木こりが銘木を探しに当地を訪ね、谷川に湯煙を見、岩間より湧き出る湯を発見した。たまたま、この湯に傷ついた脚を浸しては近くの梢に宿る鶯(うぐいす)が、数日にして傷を癒し、治って飛び立ったことを見て、効能著しい湯であることを知り、鶯の湯治から「鶯宿」の名が付いたといわれている。
 この他にも、下呂(げろ)、強羅(ごうら)、雄琴(おごと)、指宿(いぶすき)、また、ほったらかし温泉等、変ったユニークな温泉地がある。これらの由来は、別の機会に語りたい。このように、温泉大国と言われる日本には実に多くの温泉地、温泉施設があることはご案内の通り。
 データによれば、日本には3,100ヶ所余りの温泉地が、そして、21,000ヶ所以上の温泉施設がある。勿論、それぞれの温泉地には、それぞれの温泉の由来・歴史があり、調べれば調べるほど興味が湯水のように湧いてきたことも事実。
 これからは、私も暇を見ては、大好きな温泉地を巡り、ただお湯に浸かるだけではなく、温泉地の由来、そして歴史に触れてみたいと改めて感じさせて頂いた。温泉好きの皆さんとお会いした際の温泉談義を楽しみにしながら今月の私のひと言といたします。

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