平成28年11月

矢吹の秋祭り

 収穫の秋を祝う「矢吹秋まつり」が、2年に1度の10月1日、2日の両日執り行われた。若衆や小若(子ども達)の「ヨイサ」、「ヨイヤサ(注1)」の掛け声と共に、軽妙な太鼓や笛の音色に矢吹町民の多くが酔いしれた。一区の山車、二区の屋台、そして、矢吹神社の神輿の運行では、それぞれが余興を工夫し、それはゝ華やかで勇壮、かつ賑やかな2日間だった。 
 特に本祭り最大の見せ場でもあった山車と屋台、そこに加わった神輿の競演は見事と言う他、形容する言葉は見つからない。山車と屋台の駆け引き、「神輿荒れ」と言われる神輿の練り歩きに、その瞬間を見逃がさまいと、その場を埋め尽くした大観衆で奥州街道は興奮のるつぼと化した。
 そもそも、本町の秋祭りに繰り出される山車、屋台の運行の歴史は古い。屋台が製作されたのは矢吹町史の年表に万延元年(1860年)とある。実に156年の歴史を誇る。なお、この屋台は、年代の古さもさることながら、屋台の大きさ、豪華な装飾は、福島県内でも屈指の威容を誇ることを、二区総区長大野康統氏から伺って知った。一方、山車の製作された年代がはっきりと記録された文献は存在しないが、1区総区長石原浩市さんの記憶によれば、1部改修されたものの2区の屋台と同じ時期の江戸時代の後期だろうと言われている。
 先人から受け継がれ、誇りと親しみが込められた山車、屋台が演出する伝統行事。それが「矢吹秋祭り」だ。忘れてならないのはやはり人。祭りの本番に至るまでのご苦労は、並大抵ではない。秋祭りのために長い間、連日のように準備と、小若の指導を頂いた両区の区長さんを始め、実行委員、氏子の多くの皆さんに只々、感謝であり、他の言葉は浮ばない。
 ところで皆さんは、何故秋祭りが開催されるのか、その意義は、と問われても、私を含めて答えられない人が、多いのではないかと思う。そこで調べてみた。誌面の都合で、詳細を記すことは叶わないが、要約して記してみたい。
 まず、はじめに、祭りとは何ぞや、から書き進める。

 本来、祭りとは「(まつ)る」の名詞形で、感謝、祈り、慰霊、鎮魂のために、神、仏、祖先をまつる行為をいう。「祭」という漢字は、切った肉の象形である「月」と、同じく手は「又」、祭壇の「示」から成り立ち、生けにえの肉を祭壇にまつる姿・形を表している。つまり、本来「祭り」とは祭祀を指していう。ご存知のように、日本には全国各地にたくさんの祭りがあり、昔から続いている祭りは、祭祀の性格を有す。特に、日本の祭りを語る上で欠かせないのが、農耕との関わりである。農耕民族の日本では、春には種を蒔き、豊作を祈願し、夏には、作物の無事の成長を祈り、殊に、台風や洪水に見舞われないよう、また害虫を追い払う「風よけ」、「虫送り」などを行い、秋の収穫には、「神楽」や「団楽」などで、神に感謝し、神を喜ばせ、また、神と一緒に祭りを楽しむ。

そして、冬は、この1年の無事を感謝し、新年の幸せを祈願し、()もる。こうした1年の繰り返しの営みが「祭り」に反映され、そして、この「祭り」を日本人は大切にしてきた。
 昔は、この秋祭りのために、村の人々は何十日、ときには丸1年も前から準備をし、精進潔斎(しょうじんけっさい=肉食を断ち、行いを慎んで身を清めること)をし、食べ物、飲み物を用意して、その日を迎えるのである。その日ばかりは、おこわを蒸かし、ご馳走を作り、神に捧げ自らも食し、祈り、感謝した。秋祭りを通し、この祭礼に参加することにより、神と人間のつながりを強め、そのことが村人たちの集団生活での絆を強める役割を果たしてきた。

 山車や屋台を持たない集落でも、それに代る様々なモノがあり、殊に神輿は、集落の若衆がねじりはちまきに、半股引(はんだ)姿()で担ぎ、「ワッショイ、ワッショイ(注2)」の掛け声勇ましく、集落一軒一軒をくまなく威勢よく練り歩き、神の目を楽しませ、村人を楽しませたものである。古しえの時を経て、今なお存続する矢吹の秋祭り。神への畏敬と、秋の実りへの感謝を込めた大行事が執り行なわれたことにより、今年は豊かな穂を付けた。嬉しい限りだ。改めて御礼を言いたい。一区の皆さん、二区の皆さん、矢吹神社の皆さん、そして、祭りに足を運んで頂いた皆さん全てに感謝申し上げ、今月の私のひと言とする。秋祭り万歳!!
 

注1:「ヨイヤサー」の謂れ「ヨイヤサ(恰弥栄)」は弥栄(イヤサカ)の意味。弥栄とは、「ますます栄える」「代々栄える」「いよいよ栄える」という繁栄を祈る意味。注2 :「ワッショイ」の謂れ諸説あり。神様がやって来て下さったという意味で発していたという言葉が「ワッショイ」に変化したという説。「和をせおう」「和と一緒にある」という説。皆と一緒に何か物事を為なす「和を以って貴しと為す」という意味の掛け声だとする説。

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