平成27年10月

「矢吹を彩る色々な秋」

「暑さ寒さも彼岸まで」。古来耳にする言葉である。気候はこの頃から、より秋らしくなり、また、寒さを感じるようになる。しかし、今年は違った。あえて例えるなら、「暑さ寒さもお盆まで」か。今夏の気候の変化は、余りにも急であり、お盆前は記録的猛暑。お盆を境に一気に涼しく、また、長雨にたたられた。いつもなら、残暑見舞の便りも何通かは届くのだが、やはりというか、当り前というか、一通も届かなかった。秋雨前線が例年よりも早く、また、長く居据わっている影響によるものだ。ペンを走らせている今も、台風18号の影響と長雨により、集中かつ断続的に、栃木、茨城、宮城、そして福島を50年に1度という豪雨が襲いかかった。その被害は甚大で、鬼怒川等の決壊等により、濁流は多数の死者と行方不明者を出し、そして多くの建物を呑み込んだのだ。改めて自然の脅威を目の当りにし、言葉もない。被災された多くの方々に、心よりお見舞申し上げますとともに、亡くなられた方々に心から哀悼の意を表し、行方不明者の無事を心から願って止まない。

今回の記録的豪雨は、昨年の広島の土砂災害を上回る「線状降水帯」と呼ばれる、雨雲の連なりが原因であるという。秋の深まりとともに、今後も予想される台風と豪雨の発生。被害がこれ以上、私たちの身に降りかかることのないことを、祈るばかりだ。

さて、いよいよ秋本番。秋といえば、スポーツの秋、文化の秋、そして食欲の秋等々、秋は様々な言葉で例えられる。まずは、食欲の秋。「禾(こくもの)みのる」頃、田んぼの稲穂はすっかり登熟し、はや稲刈りを待つばかりだ。秋の実りは豊かだ。特にこの時期、ナスが美味い。焼ナス、蒸しナス、ナスの油炒め、そして味噌汁の具としても美味だ。このように我家の食卓には、ナス料理が一日たりとも欠かせない定番のメニューだ。サンマも秋の食卓には欠かせないが、今年は不漁。値段が高く、今年は食卓に上る回数は極めて少ない。思い出せば、子どもの頃「ヤマショ商店」の移動販売車が「は~るばる来たぜ函館へ~」の大音量の歌とともに、家々を訪問。我家の前でも店開き。祖母や母が大きなバケツを片手に、サンマの量り売りで購入。お陰で、「今日もサンマ、明日もサンマ」と、毎日がサンマ三昧。多少食傷気味ではあったが、焼いても、煮ても、干して食しても美味かった。栗もよく食べた。栗といえば、栗おこわ。餅米のもっちりとした食感と、ぽくぽくとした栗の食感の組み合せは絶妙だ。しかし、ここであえてお話ししたいことは、普段の子どもの栗の食べ方だ。栗の食べ方の定番は、生栗がもっぱらだった。手の爪で栗の横腹にスジを付け、親指と人差し指でつぶして中の実を食す。シブ皮を剥き取るのが厄介で一苦労したが美味かった。野山を散策しながら、自然の恵み、栗・柿・アケビ(木通)と、何でも食べた。どの山に栗やアケビが、どの家の庭に甘柿があるのかは、その頃の子どもたちは大体わかっていた。その時期になると競って山へ、よその家の庭まで入って黙って失敬し、腹を満たした。ただ、この時期のキノコ狩りは縁がなかった。不思議といえば不思議。家族や周りの人で、キノコ狩りをしているところを見たことがなかったこと、キノコが自生する山が近くにないといった矢吹の地形を考えれば、縁遠かったことも頷ける。従って、シイタケやシメジを食することはあったものの、秋の味覚を代表する「マツタケ」など勿論目にすることはなかったし、食べたこともなかった。また、この時期といえば「お萩」。こし餡(ぜんごろし)で作った「お萩」。朝早く、母や家内が台所で大量の「お萩」を作るのだが、最近は好んで食すようになったが、子どもの頃は「お萩」よりも、羽釜の底のおコゲにカツオ節と醤油をまぶして作る、所謂、「おにぎり」が好きだった。今でも家内にお願いし、作って貰って食す。ただ、今はおコゲが出来ない為、当時の味には及ばないのが残念だ。そして、果物は、今ほどふんだんには食べることが出来なかった。ぶどう、梨にリンゴ。発熱など病気でもない限り、まず食べることは出来ない。熱にうなされながらも、梨、リンゴの冷たさは「ウマイ!」の一言。ただ例外は、稲刈時。収穫の喜びも手伝ってか、田んぼの土手で大盤振舞の梨とリンゴの味は格別だった。母が鎌で器用に皮を剥き、多少泥が付いた味はなお美味し。何個も口に頬張り、その嬉しさ、楽しみだけで、キツイ肉体労働も癒されたものだ。

ロマンチックな秋にも触れたい。まずはお月様。2週間ばかり雨が続いた為、ここのところ月夜は楽しめなかった。愛犬「ハナ」を散歩しながら見る、秋の月の満ち欠けも楽しみの一つ。どうやら、この後の仲秋の名月、「十五夜」は期待出来そうで今から楽しみだ。秋の深い青の夜空に真ん丸の十五夜お月様。ウサギが跳びはねる姿を眺めたい。秋の夜長のもう一つの楽しみは虫の音だ。コロコロ、リーンリーン、チンチロリン、ガチャガチャ、スイッチョン。童謡「虫のこえ」に登場する虫の音が暗い夜道を楽しませてくれる。愛犬「ハナ」も虫の音がする方に駆け寄り、愛猫「チビ」に至っては、虫の音を楽しむのではなく、虫そのものを「獲物」として、前足二本で跳びかかり捕捉する始末。いずれにしても、この後、私も「ハナ」も「チビ」も、それぞれに秋の夜長を楽しめることが何よりも嬉しい。

雨が降り続き、気付かなかったが、秋は私の五感の「視覚」「嗅覚」も楽しませてくれる。我家の庭のキンモクセイの香りが私の鼻を快く、そして菊花が私の目を快く刺激してくれる。ある詩を思い出した。「安らかだ まことによう晴れた空だ ほら山鳩が来た 何の木か揺すっている」と、思わず北原白秋の詩が口をつく。何とも幸せな気分にさせてくれるキンモクセイの香りが、私はたまらなく好きだ。そして、菊花。菊花は見ても綺麗だが、食べても美味しい。特に大輪の菊花のおひたしは、とりわけ美味しい。食べたことのない人は是非一度ご賞味を。

物思う秋の次は、秋祭り。そして、文化の秋。さらに、スポーツの秋と続く。

町の行事、県内の行事がこの後も次々と開催される。いつまでも感傷に耽っている場合ではない。どうやら、この後秋晴れが続きそうだ。元気で明るい話題を、この矢吹の地から発信し続けることを約束して、今月のひと言とする。

矢吹町長 野崎 吉郎

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