平成27年11月

「矢吹町の民俗芸能を思う」

 今、まさに秋真盛り。町内では、様々な秋の行事が各所で行われている。とりわけ今年の秋は、9月中旬以降、天候に恵まれたせいか、多くの人々が、秋晴れのなか、笑顔と共に心地よい汗をかき、矢吹の秋を満喫しているものと感じている。かくいう私も、多くの催し物の会場に足を運び、その場所ゝで町民の躍動する姿を目の当たりにしながら、素敵な矢吹の秋を大いに満喫している一人でもある。

 さて、先月は、子どもの頃を振り返りながら、特に「食」について書かせて頂いた。今月は、昔ながらの伝統芸能、殊に、郷土色豊かな「民俗芸能」について、私なりに日頃感じていることについて書き進めてみたい。以前から感じていたことでもあるし、また、どうしても今書き、思いを伝えなければならないと強く思い至ったからでもある。

 まず、町民の皆さんにお尋ねしますが、矢吹町の「民俗芸能」と言われている催しが、どれ位あるかご存知でしょうか。私を含めて、正確に答えられる人は数少ないのではないかと思う。誰もが正確に答えられない程、矢吹町には数多くの「民俗芸能」が存在する。私も、矢吹町史第5巻「民俗編」を読んで驚いた。巻中には、かつて、昭和54年から平成5年までの間、町内において15回に亘り、「民俗芸能祭」が開かれており、第1回から第2回までは、県の指定を受けて「ふるさと民俗芸能のつどい」が、第3回から第15回までは「矢吹町民俗芸能祭」が途切れることなく、盛んに開催されていたのである。何と演目は、開催の都度多少の増減はあったものの、50演目にも及んでいる。今、この誌面で50もの民俗芸能一つゝを紹介することは控えるが、余りの多さに驚かれたのは、私一人ではないだろう。しかも、その他にも多種多様な民俗芸能が各地区に埋もれ、未だにその眠りから覚めず、私たちの目に触れずにいる貴重な「芸能」があることも付け加えておきたい。しかし、その後、人々の生活スタイルや、これら「民俗芸能」に対する価値観が変化し、地元住民の保存意識が薄れ、「矢吹町民俗芸能祭」は、平成5年を最後に途絶えてしまったのはご案内の通りである。

 前述した民俗芸能の多くが、継承者不足、地域の連帯感の希薄化を理由に、先人たちが大事に大事に守り、育て、伝承してきた「宝もの」を、今を生きる私たちがこの事実を見過ごし、本当に「過去の遺産」にしていいのかどうかを、今敢えて多くの町民の皆さんに訴えたいと思う。

 では、そもそも民俗芸能とは、一体何なのかについても考えてみたい。本をひもとき、民俗芸能を調べた。こう書かれている。「民俗芸能とは、民間の風俗、習慣、信仰に根ざして伝承されてきた芸能」また、「その地域に住む人が育て守り伝承してきた演劇、舞、踊、音楽及びそれらの要素を備えた儀礼や行事をいう」さらに、「古来、わが国では農作物の収穫の豊凶が、即、生活に影響し、且つ、生命の存続に直結したことから、五穀豊穣や子孫繁栄、災厄を祓い、悪霊の追放を目的に願い、ウタ(歌)、マイ(舞)、オドリ(踊り)をもって、民俗芸能として発展させてきた」とある。

 そんな思いを抱くなか、先日、三城目地区「鎌倉保存会」(会長小針正広)からお誘いを受けた。数年に一度、つまり豊作の年、御霊神社の秋まつりの日に執り行われる、「三匹獅子舞」の奉納の舞を是非見て頂きたいとのお誘いであった。奉納されるのは何と5年ぶり。久し振りに見たが、今回、280年の伝統を誇る「三匹獅子舞」の「舞」「笛」「長歌(唄)」の複雑な振り付けながらも優美で、味わい深い舞と楽曲に再び触れ、私の五感は大いに揺さぶられた。

 今回は何としてでも「笠抜き(直会)」にも出席して頂けないかとの強いお誘いもあり、夕方、獅子舞の奉納者でもあり、また由緒ある相楽家にも足を運ばせて頂いた。その席で、鎌倉保存会の皆さん、区長さんはじめ多くの皆さんと語らい、そしてまた、相楽家当主の相楽金雄氏ともゆっくりとお話しをさせて頂いたことは、何よりも嬉しく、貴重な一時でした。

  伝統芸能を守り、伝承するのがいかに大変か、そして、この伝統芸能をいかに皆さんが大切にしているかを肌で感じることが出来たからである。その席で、相楽さんから一遍の資料を頂いた。その中の相楽さんの三匹獅子舞の思いを綴った手記を紹介させて頂く。

  「伝統芸能は、かつてどこにでも存在しましたが、世代交代と共に消滅の一途を辿ってきました。その歴史が途絶えることなく、住民に受け継がれてはじめて伝統芸能といわれます。(中略。)伝統と呼ばれるためには何十年、何百年の歳月を必要とします。(中略。)保存継承は地域の人たちの熱意と愛情にかかっています。先人に対する尊敬の念、共存意識、これらはすべて人と人のつながりにとって重要なことです。(中略。)伝統を守り継ぎ、生かしていくのは人の心です。伝統芸能は、そこの住民の歴史の一つです。先人が生きた証しであり、未来へとつなぐ強い糸です。」と、書かれている。実に素晴らしい手記。この手記を読んで思うことは、私たちに課せられた使命は、現在埋もれつつある、また消滅の危機にある民俗芸能をいかに掘り起し、復活できるかであると思う。

 矢吹町は、文化の香りの高いまちづくりを町民憲章の中で高らかに宣言している。民俗芸能を伝承し続けることが、いかにハードルが高いかは百も承知。先人の思い、先人が守り伝えてきた、数多くの民俗・伝統芸能を次の世代に託すことも、今生きている私たち大人の重大な役割であることを強く自覚しながら、必ず守り、伝えていくことを約束し、今月のひと言とする。

矢吹町長 野崎吉郎

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