平成27年8月

「豊かな夏を待ちわびて」

ある日のお昼時。雨の合間を縫って、この時間いつもはゆっくりと家で過ごすことが多い母が、珍しく外の炊事場で手拭いを被り、忙しげに体を動かしている。何の作業かと尋ねると「梅漬」の準備をしているとの返事。今年の我家の梅の古木は不作だっただけに、チョット怪訝な表情を見せる私に、「いつも漬けているから、今年も漬けっぱい」と、独り言のように呟く母。昔から目にするいつもの風景。出来の良し悪しはあっても、我家の慣れ親しんだ味。他所から頂いた梅と、少ないながらも古木から熟れ落ち、拾い集めた梅を丁寧に水洗いする母。梅雨が明けた頃を見計らい、土用干しをした後に、本格的に漬け込む。そういえば、知人が毎年送ってくれる「高田梅漬」も、今年は不作で送れない旨を知らせるハガキが届いていた事を思い出す。梅の不作も、今年の「空梅雨」と大きな関わりがあるのだろうなと考えていた矢先、ある新聞を手にし、目を通した。次のように書かれていた。

「今夏は、久々に冷夏と暖冬をもたらすエルニーニョ現象が強まり、梅雨明けが遅れて天候が不順になる」とのこと。気象庁は、最新の1ヶ月や3ヶ月までの季節予報で、この先の見通しをこう示した。実際、停滞する梅雨前線によって各地で豪雨を観測している。報道によれば、「エルニーニョ」はスペイン語で「男の子」を、また、「神の子=イエス・キリスト」を意味するそうだ。南米ペルー沖の海面水温が普段の年より高くなるため、雨の降る回数、量が増えて農地が潤う。つまり、「神の恵み」を受けたのが由来とされたとある。因みに、昨年は「ラニーニャ(女の子)」の傾向を受けていたことが報告されている。今夏のように、ひとたびエルニーニョが発生すると、水温が高めの熱帯太平洋東部で上昇気流が強まり、雲が発達。上昇した空気は北へ運ばれ、下降気流となって高気圧を強める。高・低気圧の動きを左右する上空の偏西風の流れる位置も変わる。今夏の偏西風は例年に比べ、緯度が低い位置に、しかも蛇行傾向にあり、日本の気象は大きな影響を受けるという。実際、連日のように九州・四国地方を中心に、全国各地で停滞する梅雨前線によって、度重なる豪雨も観測されていることはご案内の通り。

そんな中にあって心配は当矢吹町だ。雨が降らないのだ。矢吹町が位置する東北南部の梅雨入りは、平年より14日遅い6月26日。1951年の統計開始以来、67年と並び48年ぶりに最も遅い梅雨入りとなったばかりか、梅雨入り後も雨が降らない。降ってもごく短く、また、ごく少量。梅雨入り前の6月には、全くといっていいほど雨が降らなかっただけに、今の小雨の状況は先行き心配だ。影響は既に深刻だ。例えば、渇ききった水田に水が充分に回らず、田植えが6月中旬まで終らない地域が発生。今後の生育が心配であり、何より矢吹の水ガメの羽鳥ダムが大幅な水位の低下をきたし、貯水率が現時点で46%となっていることだ。例年60%の維持を目安にしている。現在の状況が続けば、8月一杯の通水が叶わず、稲の収量に深刻なダメージを与えかねない。窮余の策として、一昨年に続き定期断水を実施した。

異常気象による「ゲリラ豪雨」は願い下げだが、例年のように、豊かな稔りの秋を迎えるためにも、今後恵みの雨が降ってくれることを願うばかりだ。

しかし、楽観は出来そうにない。今年は、梅雨が長引き、恵みの雨とばかりはいかないようだ。今年は、エルニーニョの傾向が明確で、熱帯太平洋東部の海面水温がめったにないほど高い「スーパーエルニーニョ」になるとの報道がなされているからだ。従って、夏の主役の太平洋高気圧の勢力圏は普段より東へずれ、日本への張り出しは弱まる。猛暑を呼ぶチベット高気圧もあまり強まらない。梅雨前線が日本付近に停滞し、なかなか北上しないので梅雨明けが遅れ、雨量は増えやすいという。

気象庁は今夏、東日本や西日本で平年に比べて曇りや雨の日が多いという。また、現在勢力の強い大型の台風9号と11号が同時に発生している。台風の発生も、エルニーニョの影響を受けるために、例年より多く発生しやすくなるという予報も出された。梅雨のこの時期、雨が降らないことも困りものだが、降りすぎる雨はなお困る。繰り返しになるが、今夏はエルニーニョの夏だという。心して夏を迎えることは勿論だが、同時にこの後の慈雨と、いつもの夏が訪れることを心からお祈りし、今月のひと言とする。

矢吹町長 野崎 吉郎

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